ソフトウェアの品質を学びまくる2.0

ソフトウェアの品質、テストなどについて学んだことを記録するブログです。旧ブログからゆっくり移行中です。http://blog.livedoor.jp/prjmng/

【本】これからの「正義」の話をしよ・・・ええ!?

 その本は、「科学をわかりやすくする」を標榜する本にありがちな「まえがき」から始まる──。
『確率的発想法』 P.3
 ここで確率と聞いて顔をしかめたなら、あなたは間違いなく学校教育の犠牲者でしょう。断じていいますが、「学校の確率」というのは、本物の確率ではなく、粗悪なイミテーションにすぎません。
 ・・・書名と同じくらい、退屈です。
確率的発想法~数学を日常に活かす

確率的発想法~数学を日常に活かす

 

  数学系ポピュラーサイエンスの類書としては、たとえば、『数学で犯罪を解決する』とか、『運は数学にまかせなさい』があります。確率について扱った本は多いので、「バースデイ・パラドックス」とか「モンティ・ホール問題」といった有名なトピックは、どうしてもかぶりがち。 

数学で犯罪を解決する

数学で犯罪を解決する

  • 作者: キース・デブリン,ゲーリー・ローデン,山形浩生,守岡桜
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2008/04/11
  • メディア: 単行本
  • 購入: 19人 クリック: 371回
  • この商品を含むブログ (66件) を見る
 
運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 (ハヤカワ文庫NF数理を愉しむシリーズ)

 

  今回紹介するこの『確率的発想法』は、タイトルも退屈だし、学者が同じようなトピックをつまらなく紹介しているのだろうな・・・と期待はしていませんでした。しかしその予想は、あさっての方向に裏切られました。

 目次を見てみましょう。
第7章 無知のヴェール
  • 所得という公共財
  • ロールズの『正義論』
 なん・・・だと・・・?
 確率と、正義。
 こんなに違和感のある組み合わせも珍しい。
 これはつまり、確率の本じゃありません。序盤で確率の話を紹介しながら、そのコンセプトを経済学・社会学・倫理学にまでどんどん拡張していく。聞いたことも考えたこともない話が盛りだくさんです。
 ロールズなんて、自分の無教養に呆れ返った大学初年度に読んだ『倫理学を学ぶ人のために』で出会って以来。久しぶりに引っ張り出して、その思想を復習してしまいました。
倫理学を学ぶ人のために

倫理学を学ぶ人のために

 

  たとえば、ベンサムの有名な言葉・「最大多数の最大幸福」。

 これを実現するためには、生産物を完全に平等に分配することが必要であるという「ベンサム&ピグーの定理」が、確率の考え方によって「証明」されます。もちろんこの「証明」は大いに単純化された素朴なものではありますが、社会における「平等」「正義」といった抽象概念が、シンプルな算数で表現される様は、あざやかなトリックを見ているようです。
 JARO臭が色濃く漂うまえがき、
 本書は数学をベースとして、日常のできごとから、経済、はたまた環境問題や社会設計の話題まで足をのばす、たいへん欲張りな本です。股にかける分野は、数学、当契約、経済学、論理学、社会思想と幅広く、また基本中の基本からここ10年ほどの最先端の研究まで縦横無尽に取り入れてあります。一冊で300年の耳学問がでるお徳用な本なのです(ちょっとおおげさかも)。
も、読み終わった後では、嘘でも大げさでも紛らわしくもない、正当な自慢とわかります。
 確かに耳学問ですが、章が進むに連れ徐々に難解・抽象的にもなり、じっくり考えないと理解できないレベルまで紹介してくれる。そんな良書です。NHK、いい仕事している。