ソフトウェアの品質を学びまくる2.0

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【読書メモ】世界の「かつて」と「今」を正しく捉えるための『FACTFULNESS』

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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 『FACTFULNESS』は、「人間の正解率がランダム以下」になってしまう「チンパンジークイズ」でも話題になったようです。最近の『東洋経済』でも、「統計的な事実を知らない人々」という文脈で紹介されています。 factquiz.chibicode.com

 しかし『FACTFULNESS』を「統計に関する本」と分類してしまうと、大きく外してしまうことになります。

 確率や統計を面白く語った本は、これまでもたくさんありました。
 たとえば、人間の行動の不可思議さを、統計を使って説明するダン・アリエリー氏の著作。

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ずる 嘘とごまかしの行動経済学

 ここでいう統計は主にインタビューの結果であり、そこから得られるのは「設問に答えに対する真実」よりもむしろ、「人々がどう振る舞うかの真相」でした。たとえば、「祖母が亡くなる確率」は、中間試験の前は10倍、期末試験の前には19倍に跳ね上がる。成績が芳しくない学生は、そうでない学生に比べて、「祖母を亡くす」確率が50倍も高い、のだそうです・・・。

 あるいは、『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法』。こちらは、統計から得られる結論が時に非常にミスリーディングなものになることを教えてくれます。

www.kzsuzuki.com

 『FACTFULNESS』は、このどちらとも違います。
 数字は容易に手に入るもの。そこから読み取れる「事実」も、シンプルなもの。しかし人々はそもそも、単純な統計から得られるそれらの事実を知らない。賢い人も含めて多くの人が、世界の現在を正しく把握できていない、というのです*1

 「過去と現在の世界のありよう」を正しく理解しするには、「正しい統計を正しく見る」必要があります。世界の状況についての「正しい統計」を手に入れることがそう困難ではない一方、「正しく見る」ためにはいくつかの注意が必要であることを、本書は教えてくれます。

 それでもなお、この本は「統計に関する本」ではないと言いたい。

 それぞれの物語に裏にある数字を見ようとすることは大切だ。でもそれと同じくらい、数字の裏にある物語を見ようとすることも大切だ。数字を見ないと、世界のことはわからない。しかし、数字だけ見ても、世界のことはわからない。(第5章 過大視本能 より引用)

 世界は決して最善ではないけれど、確実に善くなっている。「先進国」のわたしたちが「あの人たち」と分断しがちな国の人々の暮らしは、わたしたちがそう遠くない過去に克服してきた暮らしなのだ。統計と、その背後にある事実を正しく理解すれば、あるべき方向に向かうことができる。世界はこれからも善くなっていける

 それが本書のテーマなのだとわたしは受け取りました。

 400ページというそれなりの厚さ、扱っているのは「世界」と「統計」、にもかかわらず、著者(たち)の一貫した強いパッションが伝わってきてグイグイ読み進めてしまう、意欲的でとってもフェアな、素晴らしい本でした。
 そしてついでに、「お、このバブルチャートは仕事にも使えそうだな・・」と、「世界」とまったく関係ないことにも思いを巡らせたのでした・・・。

 ちなみにこの本を読んで、糸井重里さんの有名な以下のツイートを思い出しました*2。  

*1:その「誤解」の内容が本書の読みどころでもあるので、内容を書いてしまうと読む楽しみを損ねてしまうので、書けないのですが。

*2:このツイートのツリーにも、思った以上に悪意がぶら下がっていて驚いた・・・。