ソフトウェアの品質を学びまくる

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【本】Amazonは書誌データに「質量」を追加すべき

 本の厚さ・重さを表現するのに、「漬物石にする」という古典的な表現がありますが、漬物が浸かりすぎるくらい(物理的に)重厚な2冊のハードカバーを読了。
  • 島田荘司『写楽 閉じた国の幻』:684ページ・4.2cm
  • 花村萬月『ぢん・ぢん・ぢん』:676ページ・4.4cm
 本を読むシチュエーションとして一番多いのが「吊革につかまって」、二番目が「布団に寝転がって」であるわたしには、この重さは疲れすぎます。
写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻

 
 『写楽』の主題はズバリ、「写楽の正体は?」
 この小説を読むまで知らなかったのですが、東洲斎写楽は、およそ10ヶ月の期間内に約140点の錦絵作品を出版した後、浮世絵の分野から姿を消した という謎の浮世絵師(Wikipediaより)。あまりの謎の多さから、たとえば葛飾北斎がその正体なのでは?といった、たくさんの説があるそう。
 本作はそんな諸説を蹴散らすであろうという作者自身の説を、小説の形を借りてひたすら書き倒した小説。
 率直にいって、その新説とストーリーは、まったく混じり合っていない!まず説ありきで、それを説明するためだけにストーリーがある。会話の形をしながらもほとんど独白・説明であり、途中で主人公が「まとめ」に入っちゃったりして、笑ってしまうほどです。
 会う人会う人、新説の裏付けてくれるような重要人物で、さらには主人公にもっとも近い女性はまさに、新説を証明するために必要なことをすべて補ってくれるような、都合のよすぎる天才・博識・境遇。しかも超絶美人。ちょっとマンガ的ですよね。
 しかし、面白いのです。これだけ言っておいてなんですか、小説としても成功している。途中で読むのを止めることなど、とてもできません。
 新説を追求する「現代」の合間合間に、写楽の絵の版元である蔦屋を中心にした「江戸」の挿話がありますが、当時の庶民の生命力に満ちた様子、特に歌舞伎小屋の雑々とした躍動感にはわくわくします。
 ストーリーの最初っから憂鬱になる展開で読む気をなくしそうですが、最後まで堪能する価値がありますよ。重いけど。 
ぢん・ぢん・ぢん

ぢん・ぢん・ぢん

 

  『ぢん・ぢん・ぢん』は、「花村満月は二度読めない」と思わせてくれた作品。
 いなかから出てきたヒモ志望の美青年が、新宿で生きていく中で、性と死、美と醜、支配と差別、ホモセクシャルとヘテロセクシャルの徹底的な対比を目の当たりにして、大きく変化していく。

 登場するキャラクターは、その対比を決定的にするような極端な男女ばかり。乱暴というか、戯画的ですらあるけれど、軸となる2人の男女をしっかり描くためには、周りの人間はそれぞれの役目だけを鋭く表出したものであればいい、という割り切りなのでしょうか。
 結末に至るまでの倒錯に満ちたおどろおどろしさは凄まじく、ページを繰る手が止まらないという凡庸な表現がよく当てはまります。が、とにかくとにかく性描写が続き、わたしはとても受け入れられませんでした。残念。