「今年の漢字」を個人的に選ぶとしたら、わたしはまっさきに「A」を選びます。そう、「インフルエンザA型」のAですね。
保育園恒例のクリスマスプレゼントとして次男がまずもらい、それでも治る頃にはギリギリ帰省の予定には間に合うという日程感と思っていたところで長男がそれを引き継ぎ、帰省はあきらめたけれどせめてゆっくり自宅で年末年始を迎えようと思っていた矢先にわたしの頭が痛くなり普段感じない足のけだるさを覚えながらも病院は開いていないのでインフルかどうかは確定していません。
年の瀬なので、2019年に読んでとても好きになった本のうち、Evernoteにまともにメモが残っているものを紹介します。
わたしは貧乏性のためあまり本を買わず、一般本は市の図書館で、技術本は会社の図書室で、マンガはゲオで借りることが多いのですが、以下の本は「これは買って手元に置いておこう」と思った本ばかりです。なお、新刊ばかりではありません。
IT技術関連
リーダブルコード
リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)
- 作者:Dustin Boswell,Trevor Foucher
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2012/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
今年は朝活の一環として、PyQでPythonを勉強し始めました。「未経験からのPython文法」というコースでまだ少し残っているのですが、やはり書いて動かして直して・・・というループで勉強するのはいいなと感じています。
『リーダブルコード』は、各プログラミング言語固有の文法を解説するのではなく、言語に(あまり)依存しない、より一般的な「良いコード」の書き方について教えてくれます。変数の使い方、名前の付け方といった基本的な話題から始まるので、仕事としてプログラミングをする機会に乏しいわたしが読んでも、たくさんの学びのある内容でした。何度も読み直すと思います。
Web API: The Good Parts
- 作者:水野 貴明
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2014/11/21
- メディア: 大型本
仕事でAPIに関わる機会が増えてきたので、入門書として手に取ったものです。
ソフトウェアには、機能性に加えて、性能や信頼性といった品質特性が求められますが、Web APIの場合、「他の多くの開発者に使ってもらうための利便性、理解容易性」といった、ちょっと特有の特性も求められます。
本書では、Web APIの基本を概説したうえで、これらの品質特性を高めるためにはどのように設計すればいいのかということを丁寧に説明してくれます。設計に絶対の正解はないことから、世の中の巨大Webサービスの事例を挙げつつ、著者自身の見解も交えてくれるので、とても分かりやすい内容になっています。
現場で役立つシステム設計の原則
現場で役立つシステム設計の原則 〜変更を楽で安全にするオブジェクト指向の実践技法
- 作者:増田 亨
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/07/05
- メディア: Kindle版
「システム設計」はなかなかコンテキスト依存な言葉にも思えますが、SIer的な言葉でいえばこれは「内部設計」、つまりソフトウェアを使用する分にはあまり意識しないけれど、性能・保守性・拡張性・可読性などにガンガン響いてくる、「プログラム全体をどう組み立てるのか」の部分を指してい(ると思い)ます。
初めはリファクタリングの話が出てきたので、きれいなソースコードの書き方の話なのかと思いましたが、テーマはもっと広範。「オブジェクト指向で拡張性の高いソフトウェアを作るには、全体と部分をどう設計すればいいのか」ということが、著者の熱い思いとともに述べられています*1。これも読み込むほどに発見の多い本のようなので、読み返すことが多そうです。
ノンフィクション
FACTFULNESS
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
いやもうこれは今年ナンバーワンでした。売れるだけあります。FACTFULNESS自体を疑えという姿勢も好き。
ブログの記事を書きました。
AIと憲法
この本は実はまだじっくり読めていないので感想文を書く資格がないのですが・・・、
AI、機械学習、深層学習を技術的な側面で解説してくれる本はたくさん出版されていますが、憲法・法律、人間の権利・ロボットの権利、保険、社会規範、といった社会学的な側面から解説してくれるのがこの本です。
たとえば、AIによるプロファイリングの精度が上がり、効率的な運用のために人間の関与がなくなっていくことが予想されます。この場合、AIに何らかのバイアスや誤りが含まれていたとき、継続的に不利な扱いを受ける人が出てくる可能性があります。
これに先立ってGDPRでは、
データ主体は、当該データ主体に関する法的効果をもたらすか又は当該データ主体に同様の重大な影響をもたらすプロファイリングなどの自動化された取扱いのみに基づいた決定に服しない権利を持つ
とすでに規定しているうえに、必要とされる人間の関与が「やってるフリ」だけにならないように、実質的なものであることを保証しなければならないとまで念押ししているとのこと。
これからAIが当たり前になっていく社会で、このような法規制が技術の進化の足止めになるのではというよくある批判をものともせず、論ずるべきことを正しく論じていくという論者のみなさんの姿勢が強く表れている本です。
国旗で読む世界史
- 作者:吹浦 忠正
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2017/09/02
- メディア: 新書
大学生の時から「国旗」に関わり続けてきた著者による、国旗にまつわるエピソード集。国旗が新しく作られる時、掲げられる時、変わる時、そこにはたくさんの重いドラマがあるのだなと感じさせられます。
著者は多くの国際行事に関わっており、この世界では重鎮といえる存在なのでしょうが、そのキャリアをことさらアピールするわけでもなく、丁寧で中立的な視点で書かれています。それぞれのエピソードはせいぜい4ページほどに丁寧にまとめられており、飽きがこない。読み物としても面白く、また勉強になる良著です。
たとえば、「月面のあの米国旗は、まだあるのか?」というトピックがあります。NASAの調査によると、6本中1本を除いてすべて存在しているとのこと。ただ・・・、
この先は、ぜひ読んでください。
小説・マンガ
恋は雨上がりのように
- 作者:眉月じゅん
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/04/03
- メディア: Kindle版
これはおじさんが絶対に読んではならない本だし、間違って読んでしまったら最後まで読まざるを得ないし、なんならAmazon Primeでアニメ版まで観てしまうやつ(実写版は観ない方がよさそう)だし、「これは買って手元に置いて」おいたら家族に誤解されてしまうので買えないやつなんですけれど、これはおじさんは読んだ方がいいですよ。
あらすじとして、「45歳のファミレス店長さえないバツイチ男に17歳女子高生が恋をする」という、おっさん向けのあざといやつかと思ったら・・・とてもよかった。今のはよかったぞーーー!
さらにいうと、エンディングテーマのAimerの『Ref:rain』の曲もいいしPVも至高すぎるんですよね・・・。このPVから一本映画起こしてもらえませんかね?
かぐや様は告らせたい
かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者:赤坂アカ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/04/19
- メディア: Kindle版
これまだ6巻までしか読んでないから絶対先の話ネタ晴らししてほしくないんですけれど、今年のナンバーワンノンフィクションが『FACTFULNESS』なら、ナンバーワンマンガは絶対に『かぐや様は告らせたい』なんですよ。もう何ていうかぶっちぎりに面白いです。
ラブコメです。で、「コメ」成分が強めのラブコメなんですけど、急に「ラブ」成分の濃度を急上昇させてくる。
よくTwitterに上げられたマンガを読んで「尊い」とか「語彙力を失う」とかいう本当にハイレベルなレスを付ける人たちがいますが、いやほんとこれは語彙力を根こそぎ奪ってくほどの破壊力なんです。「コメ」単体でもものすごく面白いのに、「ラブ」の落差で大ダメージを与えてくる、これは恐ろしい才能ですよ。
全然マンガのあらすじに触れていませんけれど、とにかく読むべきです、特に5巻はラブがコメり過ぎてて語彙力が語彙り過ぎてしまいました。煩悩にまみれすぎて同じシーンを108回くらい読み返してしまいました。
デビルズライン
- 作者:花田陵
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/09/20
- メディア: Kindle版
すみません、これもまだ途中までしか読んでいないのですが、本当によい作品です。
どんな話かというと・・・、まずAmazonから。
都会の喧騒の裏で連続発生する吸血殺人。ある日、恋愛に疎い大学院生・平つかさは、自分にじっと向けられた男の視線に気づく――。愛と欲望、暴力と献身が交錯するダークファンタジー第1集!
メチャクチャ面白くなさそうじゃないですか!?
Wikipediaの方がまだマシです。
吸血欲をもった「鬼」と呼ばれる存在が静かに息づく現代日本。人と鬼のハーフであり、警視庁公安五課で鬼の犯罪を取り締まっている安斎結貴は、捜査の最中、大学院生の平つかさと出会う。惹かれあう2人は、やがて鬼の抹殺を企てる組織「CCC」や、それを裏で操る黒幕の陰謀に飲み込まれていく。
でもね、これすごくいいんですよ。主人公含め、ほとんど鬼は、「病気みたいな」自分の性質に苦しんでいる。人間たちに疎まれ、恐れられ、危険視される自分たちの存在にもがいている。
この作品を底をずっと流れているのは、「悲しみ」です。鬼の姿に変異し、血を求めてしまう自分への怒りと悲しみ。話が重くなり過ぎないように注意深く軽いテンポも交えていますが、鬼たち、人間たちがそれぞれ抱える過去、葛藤、やり切れなさが、作品全体を覆っています。
そこにサスペンス。鬼を狩ろうとするもの、鬼を守ろうとするもの、誰が味方で、誰が敵なのか。登場人物はそれほど多くない、にも関わらず張り巡らさせる複雑な関係性。ラブとサスペンスと、「鬼」というギミック、この組み合わせに「悲しみ」というスパイスを効かせた『デビルズライン』、もう完結しているようなので、この正月に一気に読むぞ!
おわりに
最後の方ちょっと語彙が乱れてしまいましたが、今年もたくさんの良い本に巡り合えました。良い本はちゃんとお金を出して買って、著者の方にまた良い本を書いていただきたいと思います!
*1:Amazonのネガティブレビューは、この部分を批判しているものもあると思う・・・