ソフトウェアの品質を学びまくる

ソフトウェアの品質、ソフトウェアテストなどについて学んだことを記録するブログです。

ド・モルガンの法則、そしてキルアのOR - その1

 以下の記事で紹介したレビュー祭り、永田さんのセッションで、あいまいな日本語表現に関するお話がありました。
絶対ドラゴンズに勝って欲しい
 恥ずかしながら、この例文の何が曖昧なのか、なかなかわからなかったわたしですが、最近読んだ池上彰さんの著書にも、面白い「曖昧さ」の例がありました。
 
東京と長野の間を走る新幹線
 こんな表現を聞いた男の子が池上さんに、「新幹線はどこへ行くの?」と問うたそうです。池上さんも初めは、何を聞かれているのか理解できなかったそうです。この文章の曖昧さ、わかりますか?
  • 新幹線は、東京と長野の間を走る
  • 犯人が、狭い壁と壁の間を逃げる
 こう比べてみると、形式的には同じでも、「間」の意味がまったく違いますよね。
 これってたとえばスマートフォンのタッチパネルなんかで、「アイコンとアイコンの間をフリックすると、」みたいな表現は、誤解を招きかねないってことなのかと。言葉ってやはり難しい・・・。

論理関係の曖昧さ

 自然言語の曖昧さでもっとも重いのはやはり、論理式につながる表現だと思います。典型的なものは、以下の3つでしょうか。

否定の範囲の曖昧

 たとえば、
平日で、かつ午後7時以降でない場合、
 「でない」が「平日で」にもかかるなら、「平日でない、かつ、午後7時以降でない」のように、否定語は命題に直接くっつけて、さらに命題を読点で区切るなどして、少しはクリアにすることができるでしょう。スマートではないが・・・。
 「平日で、かつ午後7時以降でもない場合」のように、「で」を「でも」にすることで、否定語が前の命題にもかかることを匂わすことはできますが、これは日本語以外だと、汲みとってもらうのが難しいかも。

全否定と部分否定の曖昧

 たとえば、
すべてのチェックボックスがチェックされていない場合
 チェックボックスが「() () ()」である状態(全否定)を言っているのか、「(レ) (レ) ()」という状態(部分否定)でも該当するのか曖昧。「すべて~ない」という表現は危険です。
 前者であれば、「チェックされているチェックボックスが1つもない場合」。後者であれば、「チェックされていないチェックボックスが1つでもある場合」の方がクリアですね。

論理の優先度の曖昧

 たとえば、
入会から5年以上経っている、または特別会員で、かつ購入額が20,000円以上の場合
 論理演算子の優先度は一般的に、NOT > AND > OR となっているはずですが、それを暗黙に求められても困る。
 実例として、品川図書館の検索システム
 5つの検索項目を結ぶ論理演算子に、AND、OR、NOTが自在に選べます。どういう検索結果を期待しているのか、ユーザにはわかりづらいところです。

閑話休題。

 冒頭で触れた池上彰さんの本、けっこう面白かったです。言葉の誤用、変遷、敬語、カタカナ用語といった、日本語についてしばしば議論になるテーマを、池上さんらしい、丁寧で手堅く、決して炎上しない無難な語り口で一通りさらっていきます。
その日本語、伝わっていますか? (講談社+α文庫)

その日本語、伝わっていますか? (講談社+α文庫)

 

  たとえば「悲喜こもごも」という言葉。

 「入試の結果発表会場は悲喜こもごもで・・・」なんて使いがちですが、これ、誤用だそうです。一人の人間が、悲しみと喜びをかわるがわる味わうことだそうで。知りませんでした。
 ちなみに上の「閑話休題」の使い方も、誤用です。「閑話休題」は、その後の話ではなく、それまでの話を無駄口をみなすわけですから・・・まあ、あながち誤用でもないか。。。
 キルアもド・モルガンも出てこないまま、その1を終わります。