ソフトウェアの品質を学びまくる2.0

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GAFAの席巻に関する、語り口の全く違う2冊の本

 『GAFA×BATH - 米中メガテックの競争戦略』と、『the four - GAFA 四騎士が創り変えた世界』という本を読みました。
 タイトルの通りテーマはともにGAFAなのですが、切り口と味わいがまったく違ってとても面白いので、読書感想文を書いておきます。

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

  • 作者:田中 道昭
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 こちらは読み始め冒頭から「コンサル」「フレームワーク」というキーワードが脳裏に浮かび、さらには「そのままパワポにできそう」という印象さえ受けるほどのスマートさ。本来は複雑極まりないであろうGAFA、BATH、そしてその関係が、驚くほどきれいに仕分けされ、陳列されています。

 まず各社については、孫子の兵法に基づくという著者独自の分析メソッド「5ファクター分析」に基づいて分析しています。5ファクターとは、以下の通り。

  • 道(戦略目標): ミッション、ビジョン、バリューなど。
  • 天(天の時): タイミング、変化、時間など。SWOT分析やPEST分析が対応。
  • 地(地の利): 市場、業界構造、競争優位。3C分析や5 foces分析が対応。
  • 将(リーダーシップ): 社会的リーダーシップ、組織的リーダーシップ。
  • 法(マネジメント): ビジネスモデル、収益構造。

 第1章で扱われるAmazonでいえば、「道」は「地球上で最も顧客第一主義の会社」というミッション。「天」は、カスタマーエクスペリエンスを向上させるテクノロジーの進化。「地」はeコマースからリアル店舗への展開。「将」は創業経営者であるジェフ・ベゾス氏のリーダーシップ。「法」は小売りでは最低限の営業利益率を維持しつつ、AWSで効率よく稼いで事業拡大につなげる構造。というように整理されています。

 そして、米国のGoogle・Apple・Facebook・Amazonに、それぞれ中国のバイドゥ・ファーウェイ・テンセント・アリババを対応させ、類似点を説明することで、相違点もクリアにしていくという構成になっています。

 たとえばAmazonの「道」で「顧客第一主義」が謳われる一方、「顧客」に該当しない競合(場合によっては競合でさえない存在)は、「Death by Amazon」「アマゾン・エフェクト」ともいわれるような苛烈な淘汰を受けることになります。
 一方中国のアリババは「社会的問題をインフラ構築で解決する」ことを「道」としています。地方のシニアにとって買い物の生命線である「パパママショップ」(家族経営の零細小売店)を潰しにかかるのではなく、デジタルコンビニエンス化することで、消費データを獲得しながら地方のインフラを壊さないという戦略をとっていると対比されています。

 4社同士を比較していくと、バイドゥだけはやや見劣りするものの、米国の巨大プラットフォーマーも盤石ではないのだということを感じされられます。

the four - GAFA 四騎士が創り変えた世界

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

 the four、「四騎士」とは、

ヨハネの黙示録の四騎士。地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権利」を与えられている。

からの言葉で、GAFAという4企業はネガティブな筆致で描かれていきます。
 『競争戦略』が洗練された枠組みの中で「報告書」のようにきれいに整理されていたのに対し、『the four』は著者自身がGAFAビジネスの周辺で力を発揮していた起業家であるからこそ書ける「物語」のごとし。ビジネス的な側面だけでなく、経営にかかわる人々のエピソードや、歴史・宗教的な側面から見た分析が連綿とつながって、かつまったく飽きさせない語り口は、お見事としかいいようがありません。

 『競争戦略』でもApple製品は「プレミアムブランド」という位置づけで語られていますが、『the four』ではこの点がより深堀されていきます。Appleがなぜこのような地位を獲得するに至ったのかについて、「ブランド品がなぜブランド品として売れるのか」という観点で語られます。

ぜいたく品は合理性という意味ではまったく意味がない。私たちはただ神聖なる完璧さに近づきたいという欲望、あるいは生殖の欲望から逃れられないというだけだ。

 Appleは自分たちの製品をぜいたく品、ブランド品と位置づけている。Apple製品を持つことは、神の美しさに近づくことであり、スティーブ・ジョブズは神格化されたアイコンであり、(当初完全に的外れとされた)アップルストアは神殿であると。

 Appleとその製品を、美をつかさどるギリシャ神話の神のように扱う一方で、Googleのことは、一神教の神のように描写しています。人々の告白に耳を傾け、すべてを受け入れ、答えを返してくれる存在というわけです。ただし・・・

神との違いは、グーグルが人々の望み、夢、不安を盗み聞ぎしてカネを稼ぐということだ。グーグルは、それらへの答えを提示したいという者すべて(商品を販売したい企業すべて)から、料金を取りたてている。

 「使いやすくて便利なもの」の延長ではなく、神性さえを獲得したサービスとして解き明かしていく展開はとってもエキサイティングです。

二冊を読んで

 『the our』のAmazonの章では、意外な事実が語られます。
 Amazonの席巻により、リアルな大型店舗をもつ企業は軒並み没落・・・という印象を受けがちですが、それは雑な捉え方のようなのです。アメリカ最大のモールを所有するグループは、富裕層が住む地域に資産を集中させることで安定した運営を継続。高級モールを所有する別のグループも、面積あたりの売上げを伸ばしていると。

 Appleの章でも同様のことが語られます。

実店舗の苦境は、デジタル化による秩序破壊のせいだとされている。 しかしネット販売は、いまだ小売り全体の10~12パーセントを占めるにすぎない。消滅しかかっているのは店舗ではなく中産階級であり、彼らに商品を売っていた店舗である。・・・
かつて中産階級はアメリカの61パーセントを占めていた。しかしいまやその層はマイノリティであり、人口の半分に届かない。他は収入がそれより下か上の層だ。

 どうもGAFAによって世界は、良い方向には向かっていない。
 さらに『競争戦略』では「この状況で、日本はどうするべきか」、『the four』では「この状況で、あなたはどうするべきか」が、それぞれ終章で語られています。世界の趨勢も、日本の立場も、個人が求められる能力も、どんどん厳しくなっている。その中で、日本が、わたしたちがどう生きていくべきか・・見つめ直さざるを得ない、口に苦い良書でした。