ソフトウェアの品質を学びまくる

ソフトウェアの品質、ソフトウェアテストなどについて学んだことを記録するブログです。

2023年前半に読んで特によかった本

今年の前半6か月で読んだ本のうち、お気に入りのものを紹介します。
読んだ後時間が経つとどんどん書く気がなくなるので、その時点でツイートに吐き出したものをまとめ直しております。

なお、前回分はこれ。 www.kzsuzuki.com

IT技術系

アジャイルメトリクス

開発方法論がウォーターフォールからアジャイルになったからといって、メトリクスが本質的に変わることなんてあるのだろうか?と思いながら読みました。
結果としては、たぶんYES。最近よく「ソフトウェアの品質とは何か」という哲学質問をTwitterで見かけますが、この本を通じて、自分なりの考えをだいぶ再定義できたように思います。それを吐き出したのが、この記事です。

www.kzsuzuki.com

またこの本は、単に「こんなメトリクスがあるよ」と列挙するものではなく、どのようなツールで計測を自動化し、その結果をどう生かすかということにもたくさんの紙面を割いています。
実はまだ、第8章『ソフトウェア品質を測定する』とその周辺しか読めていないので、下期ちゃんと読みます。。

ビジネス系

解像度を上げる

思考や情報を広げる・狭める・深堀りする・網羅する・・・
こういった「思考の構造化」をどのように行うのかを構造化して説明した本(メタ)。ロジカルシンキングもこの構造の一部として位置づけられるような気がしています。

実はまだ、さっと一読しかできていないのだけれど、何度も読み返して自分の思考の訓練に使えるようにしておきたいと感じました。若いうちに出会えたらもっとよかったなあ。

ビジネスの名著を読む〔マネジメント編〕

「ビジネスの名著を20冊、ぎゅっと1冊に濃縮しました!」というと、「はいはい、ファスト教養ファスト教養」って色眼鏡で見てしまうのですが、栄養もめちゃくちゃある本でした。
ビジネスにおいて誰でも聞いたことがあるようなコンセプト・フレームワークが当時どう語られ、今どのような意味をもつのかということを知ることができます。もちろん原著をしっかり読み込むのが一番なのかもしれませんが、概要+アルファを理解するのにありがたい選択肢です。

この本で扱っている本のうち、『小倉昌男 経営学』で言及されている論文の話が面白かった。
ロケットの打ち上げにおいて、成功と失敗の数が、新しい打ち上げの成功にどういう影響を与えるかを調べたものです。
結果は以下とのこと。

①成功体験も失敗体験も、その後の成功確率を上げる。経験はプラスに働くといえる。
②成功経験と失敗経験の効果の強さを調べると、その後の成功をより高めるのは、失敗経験の方である。
③失敗経験が乏しいまま、成功だけを重ねてしまうと、むしろその後は失敗確立の方が高まっていく。

「うまく失敗する」「小さく素早く失敗する」ことがいかに大事かという問いへの、強力な示唆だと思います。

『グローバル×AI翻訳時代の新・日本語練習帳』

「自分の日本語をAI翻訳で適切に翻訳してもらうには」という切り口で始まります。 PART1の最初で紹介される2つのtipsが「必ず主語を書く」「目的語をちゃんと書く」なんですよ。日本語どんだけ省略するのよっていう。

前半でこのような個別的なテクニックについて語り、後半は伝わりやすい文章構成、異文化コミュニケーションで注意すべき点などがまとまっています。「自分の意図を正しく伝えるには」ってのが本書のテーマで、その1つが「AIの翻訳に耐える文章」ということですね。

ノンフィクション・エッセイ

科学オモテウラ大事典

ポピュラーサイエンス好きにお勧めの一冊。1つのテーマをトピック2つセットで読むという面白い構成。
核分裂と原子爆弾、イオンとマイナスイオン、エジソンとテスラ、・・・みたいな、「科学の光と闇」「技術の裏にあるドロドロ人間模様」的オモテウラもあれば、使い捨てカイロと冷却パック、ミトコンドリア・イブとY染色体・アダム、みたいなオモテウラもあり、楽しく読めます。

気に入ったエピソードの1つが、アルキメデスのてこの話。
「棒と支点と足場を与えてくれれば、地球でも動かしてみせる」というエピソードだけれど、その3つがそろっていたとしても、1017 kmの長さを棒を使って地球を1mm動かすには19兆年かかるという計算なんだと。そういう計算をしてしまうのが好き。

フィクション

アーモンド

中二の長男に勧められて読んだ本。こども向けかな~と思いきや、いい意味で裏切られました。
喜怒哀楽を感じることのできない主人公が、自分に興味を抱く異性や、暴力でしか自分を表現することのできない少年と出会って、奇妙な関わり合いを過ごしていく話。説明しづらいのだけれど、とてもよかった。
情緒に特異性があるという点で、『アルジャーノンに花束を』を思い出した。本棚に眠っているな・・・。

漫画

中年どまんなかになってくると、「夢を持った若者の挑戦と挫折」にめっちゃ弱くなりますよね。
その中でも「舞台に立つ」系の作品は、ままならないもどかしさにこちらも泣けてきます。前回の記事で紹介した『ピアノの森』のサブ主人公の劣等感だったり、(アニメしか観ていませんが)『ぼっち・ざ・ろっく』の結束バンドによる超アウェイなライブだったり・・・。

べしゃり暮らし

「学園の爆笑王」を名乗り、誰よりも自分が面白いと思っている主人公が、漫才出身の転校生に出会って、漫才の道を進んでいく話。
森田先生の作品は『ろくでなしブルース』しか読んだことがなく(なので吉祥寺(ジョージ)は怖い街だと思っている)、何となく食わず嫌いだったのですが、『べしゃり暮らし』は素晴らしい作品でした。「人間模様」というと本当にありきたりな言葉なのですが、漫才に関わる登場人物たちの喜びと、野心・苦悩・葛藤が丁寧に描かれ、わたしたち中年こそが読む話、と感じました(少年ジャンプでの連載だけど。。)。

ランウェイで笑って

『ランウェイで笑って』も良かったですね。
幼い頃からパリコレモデルを夢見続けているが身長が足りない女子と、ファッションデザイナーを志すも家庭の経済状態に阻まれる男子が、お互い支え合ったりライバルになったりしながら成長していくお話です。

何だか著者の画力が急速に爆上がりしていって、見開きが映える映える。デザインした服やモデルのすごさの表現が、後半は能力者バトルみたいな描写になっていて最高でした。

あとい全然青春じゃないですが、『ジャンケットバンク』というギャンブルマンガが面白いです。

「銀行が賭場を仕切っていて、銀行を亡ぼすギャンブラーを討つ」みたいな設定がだいぶ荒唐無稽なのと、ギャンブラー同士だけでなく銀行員もバトルに巻き込まれていくところから、『嘘喰い』の亜種か?と思ったのですが、ギャンブルの内容と勝負が目新しく、今後が楽しみです。

・・・マンガは用法容量を守りましょう。