ソフトウェアの品質を学びまくる2.0

ソフトウェアの品質、ソフトウェアテストなどについて学んだことを記録するブログです。

2022年後半に読んで特によかった本

 10月に「2022年度上期」版を書いてしまったのですが、こういうのって「年度」じゃなくて「年」単位で書くっぽい!
 なので、2022年10月~12月の3か月分で書きます。年度上期分は以下。

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漫画

ピアノの森

 もう、この秋はこれがブッチギリです。
 Wikipediaによると、連載開始は1998年。休載・廃刊・移籍などを経て2015年に完結したとのこと。
 とにかく、「完結してくれてありがとう」「この物語を最後まで届けてくれてありがとう」、そう言いたくなるのに一方で、「終わらないでくれ」「ずっと物語を続けてくれ」とも言いたくなる、そんな素晴らしい作品なんです。
 どこがいいのか、どう感動したのか、何を言ってもネタバレになりそうで言いづらいのですが・・・、

 「森のピアノ」と育ち豊かな才能をもつカイと、偉大なピアニストを父にもち、ピアノの英才教育を受けてきた雨宮。物語はこの2人の少年の成長を軸に進んでいくのですが、彼らを取り囲む人たちそれぞれが、とても丁寧に描かれています。
 どんな時期に読むかで、心を寄せるキャラクターが変わるのではないでしょうか。わたしはどうしても「親」キャラクターに自分を重ねずにはいられませんでした。こどもが思っているほど完璧ではない、むしろ完璧などほど遠い、それでも子どもを思う気持ちだけは嘘ではない、ままならなさにもがき続ける親という・・・。

 わたしはマンガアプリで読みましたが、滂沱の涙にまみれた中年たちがコメント欄に多発していました。マンガアプリのコメント欄ってどこかしら荒れたコメントが入りがちなのですが、『ピアノの森』ではそれがほぼないというのも印象でした。

 連載開始が20年以上前ということで、序盤はけっこう不愉快なシーンも出てきます。絵柄も最近のものではないので、合わないと感じる人もいると思います。
 それでも、ぜひ、読み進めてください。忘れられない作品になると思います。
 わたしも、物理スペース問題が解決したら、物理本購入しようと思います・・・!

IT技術系

量子コンピュータが本当にわかる!

 量子コンピュータについて、一般の人がふんわり「理解」していることの多くが誤解であるという話をしたうえで、では実際に量子コンピュータとはどういうもので、どこまで進んでいて、この先どうなっていくのか、そして現場ではどんなことをしているのか、ということをかなり丁寧に説明した本です。

 たとえばわたしは、「重ね合わせの原理」という性質を使って、多数の計算の答えが同時に得られる、だから速い、みたいなイメージをもっていましたが、それはだいぶ違うようです。重ね合わせ方を工夫することで、正解に対して波を振幅を強く、不正解に対しては弱くすることで、正解に近づいていく・・・というもののようで、何となく考えていたものとはだいぶ違ったのです。
 また、量子コンピュータには想像以上に欠点が多いこともよくわかりました。従来コンピュータでは、データがゼロイチで表現されているためノイズや誤差に強いのに対し、重ね合わせた波の振幅や位相*1が連続値であり、ノイズや誤差に弱い、など。

 「本当にわかる」ということで、スリットの実験から量子計算の原理まで、数式ゼロ、専門用語もできるだけ使わず多くの図解付きで丁寧に説明してくれているけれど、それでもまだまだ難しい。でも面白い!
 2周目でようやく、とっかかりが理解できたように思います。量子コンピュータに興味のある方は、この本を最初の一冊にすることをお勧めします。

フィクション

新装版 炎環

 2022年の大河ドラマ・『鎌倉殿の13人』、素晴らしかったですね。とにかく、硬軟の交え方が絶妙すぎる。むしろ、緩いシーンの後にはしんどいシーンがくる、そういう警戒まで生まれてしまいました。
 わたしは高校時代、日本史がもっとも嫌いだったのですが、大河のおかげで各人物が映像付きで再生されるようになり、歴史の資料集のもっともつまらない「家系図」もすっと読めるようになり、ドラマのパワーのすさまじさを思い知らされました。日本史はもう平安時代以降全部ドラマ化してしてほしい。大・大河ってことで。

 もちろん、ドラマはドラマ、多くの部分がフィクションでしょう。
 それを踏まえて、今読みたいのがこの『炎環』。北条義時、梶原景時、阿野全成、その妻阿波局(大河では「実衣」)に焦点を当てた短編です。
 1年前のわたしなら、3行も読めなかったでしょう。でも今なら! 漢字2文字のキャラクタが、現代日本の俳優の顔で動き出す!

 とはいえ、『鎌倉殿の13人』とは人物の解釈が違います。
 『13人』での全成は大きな野心はなく、ドジなお調子者、気が弱く周りに流されてしまい最後には・・・というキャラでしたが、『炎環』では自分の野心を隠し、台頭する北条氏の陰でそっと駒を進めていく人物として描かれています。
 その違いを楽しむのも、今だからこそできる楽しみ方ではないでしょうか。

2022年の読書をふりかえって

 今年もたくさんの本に出合えたなあと思うと同時に、さくっと読み終えられるフィクション・漫画・自己啓発本に対して、腰据えて読む必要のあるビジネス書や技術書をきちんと読み込めず、地に足がついていないなあという反省もあります。
 前者も必ずしも悪いわけじゃないのですが、「なんかたくさんインプットした気になる」というのがよくないところです。

 2023年は乱読に走らず、本当に読むべき本に絞って、筋肉質なインプットを心掛けたいと思っています。

Children reading c.1960 'Celebrating World Book Day'

*1:なお本書では、「振幅」「位相」といった用語をあえて避けていると思われ、使われていません。