ソフトウェアの品質を学びまくる

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【本】戦う相手は何者なのか。そんなSF

 SFの魅力といえば、独創的な世界観、科学の勝手な拡張、人類以外の知的生命体など、たくさんあります。それに加え、戦いがテーマとなれば「何のために何と戦っているのか」という骨組みも、大きな魅力ですよね。
 「謎の敵との戦い」のあるSFを2品、読みました。
 まずは小川一水氏の、『時砂の王』
時砂の王

時砂の王

 

 26世紀の人類は、異星人によってすでに地球を滅ぼされ、冥王星まで後退している。敵の意図は不明、ひたすら人類に打撃を与えることだけを目的としているように見える。そんな中、地球側は、「メッセンジャー」と呼ばれる知性体を過去に遡行させ、過去の時点で敵を殲滅することで、未来を改変しようと試みる。

 という話で、選ばれた舞台は、かつての邪馬台国。
 敵との戦いが今ひとつなこと(何故か時代時代にあった戦いをしてくる・・・)、また彼らが人類を攻撃する理由にもサプライズが薄いことから、読後感はいまいち。
 ただ、改変しようとしている過去からつながる未来は、元の未来とは別の「時間枝」。ある時間枝を救うために、他の時間枝を犠牲にすることは許されるのか。愛する女性のいる元の未来が無限に分裂する時間枝に埋もれていくのだとしたら、そもそも何のために戦っているのか、というメッセンジャーの苦悩が描かれているのがよいです。
 次に、『ほしのこえ』
 新海誠氏制作のショートアニメーションを、大場惑氏がノベライズしたものとのこと。 
小説 ほしのこえ (角川文庫)

小説 ほしのこえ (角川文庫)

 近未来の地球で、中学を終えようとしているノボルとミカコ。そのミカコが突然、国連軍の選抜メンバーとして、謎の生命体の調査を行うために、宇宙に行くことになる。携帯のメールでやりとりする2人だが、ミカコが地球から遠ざかるごとに、時間と空間の差が果てしなく広がっていく・・・。
 という、無茶苦茶な設定のおはなし。
 小説版を読んだ後に、youtubeでアニメ版も観ました(アップロードされたものが合法か違法かはわかりませんでした。。。)。
 率直な感想としては、小説版は説明し過ぎ、アニメははしょり過ぎというところ。
 両者は結末も違うし、主眼とするテーマも違うように感じました。ストイックな匂い漂うアニメ版に対し、小説版は淡い恋心系。戦闘シーンで突然作画に気合いの入るアニメ版に対し、距離と時間の差が決定的になっていく二人の機微の描写にフォーカスする小説版。
 謎の異星人の意志や意図はあまり明らかにされませんが、匂わされた真相は、これもいまいち目新しさに欠ける。
 なのですが、地球から8.6光年も離れてしまったミカコの
「24歳のノボルくん、こんにちは。15歳のミカコだよ」
というベタなメールが、なんていうか・・・切ねえ~!と思ってしまったのでした(主観年齢30歳過ぎ)。
 で、じゃあどんな敵ならいんだよ!ということになりますが、ここ最近で「これはよいわ!」と思ったのは、『ぼくらの』という作品。
ぼくらの(1) (IKKI COMIX)

ぼくらの(1) (IKKI COMIX)

 
 これはマンガです。Wikiから引用すると
 近未来の日本を舞台に、謎の超技術で作られた巨大ロボットを操り、地球を守る為に戦う少年少女たちが主人公である。
という内容で、これだけ聞くと読む気がしない。実際読んでも初めは、何やらエヴァっぽいなあと感じたのですが、ストーリーの作り込み、きっちり回収される伏線、敵の存在に関する真相など、一読の価値ありです。ぜひ漫画喫茶へ。