ソフトウェアの品質を学びまくる

ソフトウェアの品質、ソフトウェアテストなどについて学んだことを記録するブログです。

SQiPシンポジウム2011に参加した! - その5(終)

 さて、今回で最後です。その4はコチラ。

www.kzsuzuki.com

 日科技連から、シンポジウムのルポ(速報版)がアップされていますが、まだ写真だけ。正式版が載る前に自分のエントリを終わらせたかったので、感無量です。本当は連夜投稿するはずだったんだがな・・・。

講演・パネルディスカッション

基調講演:ソフトウェアにおける作るモノの世界と使うコトの世界

 初日、株式会社SRAの中小路久美代さんの講演。
 「作る」立場にどうしても寄ってしまいがちなソフトウェア開発の世界で、「使う」立場の話を基調講演にもってくるところに、「品質」って開発側の視点だけで決まるものじゃないよね?というSQiPの意志を勝手に見出してしまいます。
 「作る」と「使う」の立場の違いで提示された例。水族館に勤務することになった方の話(おそらくコレ)がです。
 最初に魚の名前は特徴を頭に叩き込むことになるが、その知識をお客さんに話しても全然ウケない。視点を変えて、「浦島太郎の乗った亀は?」「その性別は?」という話の方が食いつきがいい。
 どっちの情報も大事ですが、デザインは「使う」方を見なくはいけないということ。そのようなデザイン、インタラクションを設計するうえでの事例や考え方が、惜しみなく披露されました。
 わたしが特に興味を持ったのは、ネーミングの重要性。つけた名前自体が、デザインのプロセスまで変えてしまうという話です。
 たとえば現場レベルでは、日常語やオノマトペを使って表現していたもの ─── これを「unwornな名前」と読んでいましたが ─── エライ人への説明のために「まじめな」言葉に変えてしまうことで、元の名前にくっついていた色々な思い・ニュアンスのようなものがボロボロとこぼれてしまう。まじめな言葉に置き換えるのは、最後の最後でいい、ということでした。
 以前何かの本で、「プロジェクトには名前をつけろ」という話を読みました。会社組織内で通用するような「何とかシステム開発プロジェクト」といったものではなく。Windows Vistaのコードネーム「longhorn」とか、何かカッコイイですよね。「名は呪である」というマンガのセリフが引かれていましたが、本当にそのとおりだと思います。
 『スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン』で、マックワールド2008でのジョブス氏のプレゼンテーションが紹介されています。
スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

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『スティーブ・ジョブス 驚異のプレゼン』 P.347
MacBook Air has the Intel Core 2 Duo. This is a really speedy processor … a 'screamer.'
インテルコア2デュオを搭載した。このプロセッサーは速いよ・・・・・・「ヒューン」って感じだ。
 まあ、終止「ヒューン」で語られたら、「定量的に言えや」って言いたくなりますが。でもこの感覚、一緒に働いている人たちなら共有できる言葉を大事にしたいと思います。楽屋ネタは一体感を増しますからね。ああ、全然デザインと関係ない話に引き下げてしまった。
 「ソフトウェア開発の世界では『使うコトの世界』で苦労しており、その専門家を使わないといけない」というのが話のまとめでした。
 なお、当日の森崎修司(@smorisaki)さんのtweetのまとめがありました。合わせてご参照ください。

togetter.com

特別講演:日本の宇宙開発最前線を語る

 有人宇宙システム 株式会社の前村さんの講演です。
 最高レベルの品質が要求されるロケット。現場では一体どんなことが行われているか。
 というテーマではありますが、動画モリモリのプレゼンテーションで、種子島でのロケット打ち上げの映像に感動した人も多かったことでしょう。全然ロケット開発に携わっていない、その過程もまだ観ていないのに、発射の瞬間に感動してしまう。これってどういう感覚なんでしょうね。
 主にハードウェアを専門にされる方から見た、ソフトウェアの品質の「よくわからなさ」を実感しました。前村さんのご経験として、ソフトウェア屋に品質をたずねても「大丈夫です」みたいな言葉しか返ってこないことがある。ソフトウェアの品質を説得力をもって端的に説明することはとても難しいと思いますが、ハード屋さんからすると納得いかないでしょう。わたしたちの課題そのものですね。
 もう1つ印象に残ったお話。
 品質に対する意識を高めるために、ロケットのそばに、各人の目標・テーマを書いた紙を貼り出しておく。仕事を始めるときにいやでも目に入るし、人にも見られている。そういう状況が、改善につながるそうです。
 難しい理屈は何もありません。いや、難しい理屈もきっと大事なんですが、まさに「現場」の、人が手書きで書いたような紙が、最終的な品質に寄与するというのは、とても好きなエピソードです。

パネルディスカッション:これからのソフトウェア品質エンジニアリング

 何かずいぶん大雑把なテーマです。日本電気 株式会社の吉澤智美さんが、強力なファシリテーターとして、個性豊かな4人の論者を御しておられました。一緒に参加した、特別講演の前村さんも後半、「やっと話す出番がきました」と。
 印象に残ったのは、イベントパンフレットでお名前の読み方を間違えられた吉澤さんが「ともみでもにほんでんきでもない」と

 

 各論者の自己紹介で共通していたのは、「品質の仕事を後ろ向きに考えるな」「品質は楽しい」ということ。1日目の懇親会の終わりの挨拶で西康晴さんが、「みなさん、品質管理は楽しいですね!?」と言い放ち、会場もいいように煽られていました。
 わたし自身は自分の仕事が大好きで、つまらないと思ったこともあまりない(というより、好きなこと・楽しいことだけ選んでやっている)のですが、ソフトウェア品質担当者は、単に「遠くから管理したがる人たち」とか「テストを淡々とする人たち」と捉えられることもあるでしょうね。
 このディスカッションは激しくtweetされていたので、個々のご発言はそちらを見るとして・・・。
 わたしの印象に残ったのは、「安心感を与えるのも品質の仕事」というお話と、「物理的な制限のないソフトウェアに『心地よい』制限を与えるのが、プロセス」というお話。
 わたしはあまり、プロセスでがんばって品質を上げるという作業が好きでなく、プロダクト品質を考えることをメインにしていましたが、少しずつ、プロセスの話も考えていこうと思っています。小学生の日記みたいな書き方でスミマセン。

おわり。

 さて、SQiPシンポジウム2011の報告は以上です。参加できなかった人の、少しでも役に立てば幸いにございます。
 「ブログを書くまでが勉強会」という名言のせいで、とにかく学んだことをブログにアップしようとしていますが、聞いた内容をどこまで書いていいのかとか、とにかく発表者の方の意図と全然違うことだけは書かないように・・・などと考えながらだと、こんなしょぼくれた感想文でも時間がかかってしまいました。 
 自分の組織では、聞いた内容をもう少し詳しくお話しして、みんなでディスカッションする、勉強会的なことを計画しています。人が集まるかわかりませんが、何がしかの改善につなげます。
 最後に、発表者・講演者のみなさん、このイベントを続けてこられる主催者側のみなさんに、感謝の意を申し上げます。