いわゆるポピュラー・サイエンス系の本を2冊、ご紹介。
世界を読みとく数学入門
悪しき義務教育の弊害で、数学が大嫌いになった人たちを救いたい・・・。
そんな慈愛の心から生まれたであろう本書。
そんな慈愛の心から生まれたであろう本書。
世界を読みとく数学入門 日常に隠された「数」をめぐる冒険 (角川ソフィア文庫)
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2008/10/25
- メディア: 文庫
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『世界を読みとく数学入門』 まえがき |
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もしかして、あなたは、数とか数学というものに、これまで相当に苦い思い出をお持ちじゃありませんか?(中略)はい。その気持ちよくわかります。 |
本書は、「その気持ち」が微塵もわかっていない、数学大好きな著者の手になる。
1つ数式を増やすたびに、本の売上は半分に減る。そんなホーキング仮説を知ってか知らずか、本書には数式が入り乱れている。「その気持ち」をお持ちの人々は、開いた瞬間、棚に戻すだろう。なのに、
1つ数式を増やすたびに、本の売上は半分に減る。そんなホーキング仮説を知ってか知らずか、本書には数式が入り乱れている。「その気持ち」をお持ちの人々は、開いた瞬間、棚に戻すだろう。なのに、
『世界を読みとく数学入門』 P.278 |
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ここまでたどりついた読者は、数の発展と人類の知性のすばらしさに感動してくれたことと思う。そして次なる時代の到来に期待で胸一杯になったことと思う。そういうあなたはもう、数学にアレルギーを持つことはありえないだろう。 |
いや、「その気持ち」をお持ちの人はおそらく一人も、「ここまでたどりつい」てないぜ・・・。
「焦らず、ゆっくり読み進もう。」「このわくわくどきどきの原理を」「この式は、眺めているだけでもすこぶる楽しい。」といった表現に見られるように、「ねえ、数学嫌いのキミタチも、この本で数学が好きになってきたでしょ?わくわく。数学好きを増やすぞお」っていう期待で満載の筆者が、はっきりいってカワイイ。間違いなく増えていないと思うが。
と、さんざん言っているが、数学好きの数学素人にとっては、面白い!先にこれを言うべきか。
自然数の不思議に始まり、確率を論じたり、黄金比に熱くなったりした末に、RSA暗号までたどり着くという、「数とか数学というものに、これまで相当に苦い思い出をお持ち」の人には絶対に辿り着けない道程を、ひたすら語り尽くしてくれる。
自然数の不思議に始まり、確率を論じたり、黄金比に熱くなったりした末に、RSA暗号までたどり着くという、「数とか数学というものに、これまで相当に苦い思い出をお持ち」の人には絶対に辿り着けない道程を、ひたすら語り尽くしてくれる。
『数学で犯罪を解決する』、『運は数学にまかせなさい』といった、数学を現実の問題と絡めて語る切り口の類書は多いが、本書の何がいいって、文庫だってこと。780円だぜ?
サはサイエンスのサ
あまりに多岐に渡り、一般人にはとてもついていけない「サイエンス」の最新の状況を、テーマに縛られずにアチコチ飛び回りながら説いていくのがコチラ。
- 作者: 鹿野司,とり・みき
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/01/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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遺伝子の話なんか、センター試験を受けて以来知識をまったくアップデートしてこなかったし、「セントラルドグマ」などすでにエヴァ用語としてしか捉えていなかったから、近頃の成果の数々は、目から鱗。図解がないのが玉に瑕だが、それでも読む価値は充分だ。
個人的には、フレーム問題から始まる「究極の謎を解くかエログリッド」や、「論理より心理が好きな脳」がとても面白かった。
ただ・・・、文体がちょっと。
『サはサイエンスのサ』 P.39 |
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古くさい遺伝子という概念のままでは、もはや生命現象の本質を追求することはできなくなっているんだよね。あたたたた遺伝子概念はすでに死んでいる、あべし。なんだよね~。 |
ほとんど殴り書きみたいな話し言葉が踊り狂ううえに、「常考」「ピザ」「ぬこたんハァ」「反省しる」「~ですね、わかります」といった、人口に膾炙しているわけでもない2ちゃんねる用語を乱発するものだから、内容の良さが台なしなのですよ。。。
ちょっとどうかと思う論理の飛躍も見受けられる。乱暴に要約すると、
「自由意志はあるかないか、という問題がある」 「しかし、それはキリスト教文化圏特有の強迫観念からきたものである」 「キリスト教文化圏に属さない東洋では、そんな問題意識をもつ必要はない」 「どうせ答えの出ない問題に関わってもしょうがない」 |
こんな無理矢理な理屈を聞かされると、本全体が品質が疑わしくなってしまう。
ただ、先端科学の紹介というのはあくまで本書の一面で、それに対する著者の意見表明というのがむしろメイン。だから、それらの意見をいちいち吟味しながら読み進めるのが、いい意味で懐疑的な、科学に対する理想的な態度なのかもしれない。
・・・余談だが、本を読んで、文章を書くのに、丸3日はかかっていると思う。書評ブロガー様たちの能力は異常だな。