ソフトウェアの品質を学びまくる

ソフトウェアの品質、ソフトウェアテストなどについて学んだことを記録するブログです。

【本】昔は誰も、「AHA体験」とか「脳にいい」とか言ってなかった。

 「脳のなかの幽霊 V.S. ラマチャンドラン」!
 「ホームズ 対 ルパン」を思わせる煽りですが、亡霊と戦うインド人の冒険活劇ではございません。脳に関するお話の本である。
脳のなかの幽霊 (角川文庫)

脳のなかの幽霊 (角川文庫)

  • 作者: V・S・ラマチャンドラン,サンドラ・ブレイクスリー,山下 篤子
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/25
  • メディア: 文庫
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  ・・・「脳」と聞いただけで眉に唾をつけてしまう、あなた(、そしてわたし)。ご心配なく。本書には、AHA体験もAHAムービーも、「これが脳にいいんです」も出てこない。何しろ10年以上も前の本。今気付いたわ。AHA、AHAHAHA・・・★

 本書は、脳に何らかの障害を負った人々が見せる、不思議で驚異的な現象と実験の記録。それぞれの事例がどれも、脳の摩訶不思議な癖や特徴を語っている。
 たとえば、失ったはずの腕を、存在しているかのように感じる幻肢。一般的には、切断された部分で神経の末端部が腫になって過敏になるために、高次の中枢がだまされて、失った手がまだあると思い込むものと説明される。
 だがラマチャンドラン博士によると、その原因は、ペンフィールドの地図上、手と顔面がすぐ側にあることにあるという。腕を失った後に起こる地図の再配置により、顔面への刺激が手への刺激とも解釈される。顔面は絶えず動いており、常に刺激を受けているため、腕が存在するというリアリティもどんどん強くなっていく・・・。
 そうはいっても、触れられているのは明らかに顔であることを、視覚では理解できているのに、それを「腕を触られている」と脳は解釈すると・・・。何とも不思議である。
 脳にかかずらわっている時間がない人も、せめて第5章は読んでほしい。目の盲点を中心にした話題だ。
 「盲点に入った点が見えなくなる」というところまではよくあるが、その見えなくなった領域が、勝手に「補完」(本書では「書き込み」と呼ばれる)されているというのだ。
 盲点の確認の仕方をご存知の方は、ぜひ確かめてほしい。

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 右の黒い点を見つめながら、目を近づけたり遠ざけたりすると、ある距離で左側の赤い四角が消える・・・だけでなく、その部分は、上の黒い棒と下の白い棒が、自然につながっていくためのグラデーションで補完されるのだ。
 第5章では、通常よりずっと大きな盲点を、事故によってもつことになってしまった人の、驚くべき事例が紹介されている。
 第3章で紹介されている実験も、やってみた方がいい!
 わたしたちがと無意識に把握している、頭からつま先までの「自分の範囲」が、誰でもできる簡単な実験で、あっさりとだまされ、拡張されてしまうことが、気持ち悪いくらいによくわかる。
 今後は簡単にだまされることなきよう、AHAムービーで脳を鍛えることを決意した。(だまされてる)