クォンタム・ファミリーズ
2035年から現代に、1通のメールが届く。
SF好きな人ならおそらくその時点で「・・・。」と閉口してしまうだろう。
そもそもよくあるような始まりだし、「そうか・・・わかったぞお!時空のネジレが、現代と未来をつなげてしまったんだよ!」「な、何だってー」というようなドラえもん的宣言にてすべてが説明されるような粗雑な世界観を予感してしまうからだ。
SF好きな人ならおそらくその時点で「・・・。」と閉口してしまうだろう。
そもそもよくあるような始まりだし、「そうか・・・わかったぞお!時空のネジレが、現代と未来をつなげてしまったんだよ!」「な、何だってー」というようなドラえもん的宣言にてすべてが説明されるような粗雑な世界観を予感してしまうからだ。
しかし本書では、それを説明するためのナイスなリクツを用意している。
パラレルワールドと接続されたのは、あまりに広く、複雑になったインターネットが原因だというのだ。「量子回路がある閾値を超え、ネットワークの直径がある閾値を超え、かつ特殊なタイプの経路が出現すると命題空間全体が量子的に発散してしまう」 |
何となく、それっぽい。
SFで大事なのって、こういう屁理屈だと思う。
SFで大事なのって、こういう屁理屈だと思う。
一方で、あまりに説明的すぎるのが欠点だ。ストーリーと説明が分離して、うまく溶けあっていない。軸となる「ファミリー」たちのの関係も偏執的に複雑で、後半はもうフォトリーディングしているようなスピードで流し読みしてしまった。
設定とガジェットが面白いだけに、もったいない!そんな読後感。
設定とガジェットが面白いだけに、もったいない!そんな読後感。
MM9
ハヤカワの『SFが読みたい!』ランキングには、『イリヤの空 UFOの夏』などで手ひどい裏切られ方をしたが、山本氏の『闇が落ちる前に、もう一度』が良質なSF短編集だったということもあり、入手(@図書館)。
以前レビューした『残虐行為記録保管所』が、現代のイギリスながらも魔法が共存している世界だったのに対し、本作は、現代の日本ながらも怪獣が災害の一種として共存している世界。
「怪獣」なんて駄作リスクの高いテーマをよく選ぶなと感心するが、意外にもなかなか。『空想科学読本』でツッコミが入るような、怪獣に関する数々の矛盾は、「多重人間原理」という独自の理論ですべて解決される。ハッキリいって反則のような理屈ではあるが、これがうまく効いているのである。
神話や伝説に出てくるような幻獣や怪物は、ビッグバンで生まれたこの世界とは別の、並行世界における存在。たとえば伝説の中でその怪物が「毒」をもっていれば、その「毒」がこの世界においては「放射能」として顕現する、といった具合だ。その属する世界が違うのだから、作用する物理法則も異なる。流れる時間も異なるのだという。
神話や伝説に出てくるような幻獣や怪物は、ビッグバンで生まれたこの世界とは別の、並行世界における存在。たとえば伝説の中でその怪物が「毒」をもっていれば、その「毒」がこの世界においては「放射能」として顕現する、といった具合だ。その属する世界が違うのだから、作用する物理法則も異なる。流れる時間も異なるのだという。
怪獣にどうも魅力がないこと、戦いに迫力が感じられないこと、読んでいるうちに怪獣が使徒(気特隊がネルフ)に思えてくること、そして、「怪獣は本当に悪なのか?」と葛藤するウルトラマンのような人間ドラマがないことがどうも物足りないこと・・・と、気に入らない点もある。
が、最終話・「出現!黙示録大怪獣」ばかりは、夢中になって読んでしまった。「多重人間原理」の説明が続くが、『クォンタム・ファミリーズ』とは違って、メインのストーリーとぴったり寄り添っているところが、さすがというべきか。
ラスボス的キャラを登場させてしまったので、続編はないだろう。アイデアが良いだけに、少し残念である。
が、最終話・「出現!黙示録大怪獣」ばかりは、夢中になって読んでしまった。「多重人間原理」の説明が続くが、『クォンタム・ファミリーズ』とは違って、メインのストーリーとぴったり寄り添っているところが、さすがというべきか。
ラスボス的キャラを登場させてしまったので、続編はないだろう。アイデアが良いだけに、少し残念である。
こぼれおちる刻の汀
『こぼれおちる刻の汀』、タイトルからして読めないけれど、普通に変換すると「時の渚」。図書館の新規購入の棚に並んでいたもので、静かなイラストと読めないタイトルに惹かれて借りてみた。
何の偶然か、こちらもまた、シュレディンガーの猫がニャアニャアうるさい量子力学もの。現在の行為が過去に遡及して作用して因果律を再構築するという、これまた使い古されているのかも知れない舞台の中で、人類が太陽系内の宇宙空間で観測を行っている「近い未来」と、人類が、人類とは別の物理法則を生きる存在との”認識”戦争を繰り広げている「遠い未来」の2つのSF、そして、いきなり老婆が殺されるところから始まる「現在」のミステリ(!)が、交互に作用しながら話が進むという、異色の構成。
「近い未来」と「遠い未来」の絡み合いだけで十分に面白いストーリーが組み立てられそうで、これをあえてミステリーと綯交ぜにした発想を、成功と見るか失敗とみるか。
・・・成功とは言い難いかなあ。
2つの「未来」の話は、美しくまとまっています。
・・・成功とは言い難いかなあ。
2つの「未来」の話は、美しくまとまっています。