技術評論社の新刊が2冊手に入った(具体的にいうと、図書館が購入してくれた)ので、今夜はそのうち1冊をご紹介。
帯に、黒地に赤フォントで、こうある。
「属人性の排除」こそ、排除すべき幻想である。
確かにこの煽りは興味を引くけど、そんなテーマの本ではない。ソフトウェア開発のプロジェクトに与える影響の大きさは、人>組織>技術 であると断じて、「人」「組織」をまとめて「人間系」として語っていく。
『SEは人間力』P.19「人」の問題とは、それぞれの開発者のやる気やモラルといったメンタルな部分に由来するものです。
これに対し、「組織」の問題とは、ソフトウェア開発をおこなう組織の組織構成や、組織にどのような役割を用意しどのような活動をさせるのか、責任と権限をどのように振り分けるのかといったような、組織の活動に由来するものです。
たとえば第2章は次のような節に別れている。
一 目的は明確か
二 組織のバランスは取れているか
三 情報の流れは円滑か
四 計画は存在するか
五 必要な成果物はすぐに出てくるか
「人間系」の問題の有無のチェックリストとして、この5つが網羅的かといえば、そうではないだろう。が、ここで語られる問題はどれも「筆者が現場で見てきた」という感が伝わってきて、「改善してみよう」という気を起こさせてくれる。
右も左もわからない新人を脱し、「このやり方っておかしいかも・・・?」と考え始める中堅世代に入ったSEが、よい読者層になると思う。
右も左もわからない新人を脱し、「このやり方っておかしいかも・・・?」と考え始める中堅世代に入ったSEが、よい読者層になると思う。
なお、個人的には、第4章「もう1つのプロジェクト管理」が面白かった。この管理とは「management」ではなく「administration」であり、
『SEは人間力』P.93プロジェクトの活動自体に影響を与える課題を解決する活動という意味で使用します。「プロジェクト管理」という言葉にこだわらなければ、プロジェクトロジスティクス(後方支援)と呼んでもいいかもしれません。
として、「ハードウェア管理」「ソフトウェア管理」「ネットワーク管理」「電子ファイル管理」「開発情報管理」「リソース管理」の6つの領域に分けて説明している。
たとえば、メンバーが追加になったときに、開発用のパソコンが必要になるだろう。それは、誰が、誰に、いつまでに、どんな書式で申請すればいいのか。こういう仕事は、若い人が任されがちな、いわば「雑用」と見なされるが、一方でその仕事が回らないと、円滑なプロジェクトにはならない。
特に、電子ファイル管理・・・。
「会議」と「議事録」というディレクトリがあるのですが、「会議の議事録」はどちらにおいておけばいいのですか、先輩!
特に、電子ファイル管理・・・。
「会議」と「議事録」というディレクトリがあるのですが、「会議の議事録」はどちらにおいておけばいいのですか、先輩!
ソフトウェア開発に関する指南書で、こんな話題が出てくるのは珍しいのではないだろうか。
筆者のいう、「もう1つのプロジェクト管理の専門部隊」というのは、中小規模の開発では現実的ではないだろうが、上述の6つを「プロジェクト開始時にルール・手順を決めておくべき事柄一覧」として、使うこともできるだろう。ぜひ、次のプロジェクトに活かしてみたい。
筆者のいう、「もう1つのプロジェクト管理の専門部隊」というのは、中小規模の開発では現実的ではないだろうが、上述の6つを「プロジェクト開始時にルール・手順を決めておくべき事柄一覧」として、使うこともできるだろう。ぜひ、次のプロジェクトに活かしてみたい。