「ASAP」といえばできるだけ早く、セキュリティ業界の「PPAP」*1 といえばパスワード付きZIPファイル添付メールですが、探索的テストのPQIPというのを知ったので紹介します。
探索的テストのPQIP
「PQIP」は、Simon Tomesさんの「Three Digestible Diagrams to Describe Exploratory Testing」(探索的テストを説明するためのわかりやすい図)という記事で紹介されています。
キッカケは、手動テストケースに対する「passed」「failed」というチェックに対し、誰かの注意を引くのが failed ばかりで、passed では何かしらの共有したり議論したりする機会を逸しているとTomesさんが感じたこと。
PQIPは、探索的テストの中で見出したものをチームに共有するガイドです。
テストというと「不良を見つける」ことに傾きがちですが、そこにとどまらず、開かれた会話を促進するための機会にしようということですね。
以下が、PQIPの図です。
PROBLEMSは、いわゆる不具合・バグと思われるものを報告するものです。テストにおける「アウトプット」としては一番わかりやすいですね。
QUESTIONSは、よくわからない点を明確にするためのものです。
探索的テストに限らず、テストの結果って実は pass / fail にさくっと割り切れるものではなく、むしろ「これってどうなんだろ」「どういう理屈でこう動くんだろ」みたいな「質問」が多かったりもしますよね。
IDEASは、探索の中でひらめいたアイデアです。
テストは、仕様をその通りになぞって適否を判断するだけのものではなく、「こうしたらもっとよくなるのではないか」というフィードバックをもたらしていくものなんですね。仕様を検討している人、実装している人からは見えづらくなっている発想が、テストから生まれることもあります。
PRAISEは、称賛。テスト対象について、素晴らしいと感じたことを伝えるということです。
Tomesさんのいう通り、テストにおいては failed ばかりが注目されがちだし、場合によってはテストは「常に凶報をもたらすアクティビティ」というネガティブなイメージにもなりかねません。良くない点を伝えるばかりでなく、良いと感じた部分を積極的に、意識的に出す。これは素敵な活動ですね。
『英語の品格』(ロッシェル・カップ、大野和基・著)*2では、日本人の成果物評価について、以下のように述べています。
日本の会社で働いたことがあるアメリカ人は異口同音に、「会社に感謝されていないと感じる」と言います。それはなぜでしょうか。日本人は、評価するときに問題だけを指摘するからです。その裏には、「指摘されていないところは問題ない」という暗黙の了解があります。アメリカ人は通常、先に良いところをほめてから本題に入るので、日本人の指摘の仕方に慣れておらず、まるで全否定されてたように感じでしまいます。
このような国民性(?)から考えても、探索的テストに限らずテスト全般で、「いいところはそれをきちんと伝える」という考え方は有効だと思います。
元記事の最後では、以下のように語っています。(日本語訳はわたし)
We have a duty to inspire others with an exploratory testing mindset and approach. Let's be bold and share its true value in a way that doesn't overwhelm, frustrate, confuse, devalue, mislead or anger. Let's enhance our exploratory testing techniques by collaborating with others to evolve and improve the practice and mindset.
わたしたちは、探索的テストのマインドセットとアプローチによって、周りを鼓舞しなければなりません。勇気をもって、その価値を伝えましょう。相手を閉口させたり、気持ちを萎えさせたり、混乱させたり、貶めたり、ミスリードしたり、怒らせたりしないようなやり方で。プラクティスとマインドセットを周りの人たちと発展・改善することで、探索的テストの技術を一緒に向上させていきましょう。
JaSSTで探索的テストのセッションが!
さて探索的テストといえば、オンラインJaSST*3の第2回目(ソフトウェアテストシンポジウム オンライン Bergamot)では、ネモさんによる探索的テストのセッションがあります。
わたしもさっそく申し込みました。探索的テストをずっと実践しているネモさんのセッション、楽しみにしています!
*1:* Passwordつきzip暗号化メールを送ります
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のことです。
www.itmedia.co.jp
*2:この本はとてもお勧めなのですが、自分の英語にとことん自信がなくなる副作用もあります。自分のしょっぱい英語が、ネイティブにどんなニュアンスで伝わっているのかを思うと、身が縮む思いです・・・。
*3:従来の地域JaSSTもオンライン開催しているので、狭義のオンラインJaSSTと呼ぶべきか・・・