ソフトウェアの品質を学びまくる

ソフトウェアの品質、ソフトウェアテストなどについて学んだことを記録するブログです。

探索的テストのPQIP

France-001675 - Maze

 「ASAP」といえばできるだけ早く、セキュリティ業界の「PPAP」*1 といえばパスワード付きZIPファイル添付メールですが、探索的テストのPQIPというのを知ったので紹介します。

探索的テストのPQIP

 「PQIP」は、Simon Tomesさんの「Three Digestible Diagrams to Describe Exploratory Testing」(探索的テストを説明するためのわかりやすい図)という記事で紹介されています。

www.ministryoftesting.com

 キッカケは、手動テストケースに対する「passed」「failed」というチェックに対し、誰かの注意を引くのが failed ばかりで、passed では何かしらの共有したり議論したりする機会を逸しているとTomesさんが感じたこと。

 PQIPは、探索的テストの中で見出したものをチームに共有するガイドです。
 テストというと「不良を見つける」ことに傾きがちですが、そこにとどまらず、開かれた会話を促進するための機会にしようということですね。

 以下が、PQIPの図です。

f:id:kz_suzuki:20200922122806p:plain
credit: https://www.ministryoftesting.com/dojo

 PROBLEMSは、いわゆる不具合・バグと思われるものを報告するものです。テストにおける「アウトプット」としては一番わかりやすいですね。

 QUESTIONSは、よくわからない点を明確にするためのものです。
 探索的テストに限らず、テストの結果って実は pass / fail にさくっと割り切れるものではなく、むしろ「これってどうなんだろ」「どういう理屈でこう動くんだろ」みたいな「質問」が多かったりもしますよね。

 IDEASは、探索の中でひらめいたアイデアです。
 テストは、仕様をその通りになぞって適否を判断するだけのものではなく、「こうしたらもっとよくなるのではないか」というフィードバックをもたらしていくものなんですね。仕様を検討している人、実装している人からは見えづらくなっている発想が、テストから生まれることもあります。

 PRAISEは、称賛。テスト対象について、素晴らしいと感じたことを伝えるということです。
 Tomesさんのいう通り、テストにおいては failed ばかりが注目されがちだし、場合によってはテストは「常に凶報をもたらすアクティビティ」というネガティブなイメージにもなりかねません。良くない点を伝えるばかりでなく、良いと感じた部分を積極的に、意識的に出す。これは素敵な活動ですね。

 『英語の品格』(ロッシェル・カップ、大野和基・著)*2では、日本人の成果物評価について、以下のように述べています。

 日本の会社で働いたことがあるアメリカ人は異口同音に、「会社に感謝されていないと感じる」と言います。それはなぜでしょうか。日本人は、評価するときに問題だけを指摘するからです。その裏には、「指摘されていないところは問題ない」という暗黙の了解があります。アメリカ人は通常、先に良いところをほめてから本題に入るので、日本人の指摘の仕方に慣れておらず、まるで全否定されてたように感じでしまいます。

 このような国民性(?)から考えても、探索的テストに限らずテスト全般で、「いいところはそれをきちんと伝える」という考え方は有効だと思います。

 元記事の最後では、以下のように語っています。(日本語訳はわたし)

We have a duty to inspire others with an exploratory testing mindset and approach. Let's be bold and share its true value in a way that doesn't overwhelm, frustrate, confuse, devalue, mislead or anger. Let's enhance our exploratory testing techniques by collaborating with others to evolve and improve the practice and mindset.
わたしたちは、探索的テストのマインドセットとアプローチによって、周りを鼓舞しなければなりません。勇気をもって、その価値を伝えましょう。相手を閉口させたり、気持ちを萎えさせたり、混乱させたり、貶めたり、ミスリードしたり、怒らせたりしないようなやり方で。プラクティスとマインドセットを周りの人たちと発展・改善することで、探索的テストの技術を一緒に向上させていきましょう。

JaSSTで探索的テストのセッションが!

 さて探索的テストといえば、オンラインJaSST*3の第2回目(ソフトウェアテストシンポジウム オンライン Bergamot)では、ネモさんによる探索的テストのセッションがあります。

www.jasst.jp

 わたしもさっそく申し込みました。探索的テストをずっと実践しているネモさんのセッション、楽しみにしています!

*1:* Passwordつきzip暗号化メールを送ります * Passwordを送ります * Aん号化 * Protocol
のことです。 www.itmedia.co.jp

*2:この本はとてもお勧めなのですが、自分の英語にとことん自信がなくなる副作用もあります。自分のしょっぱい英語が、ネイティブにどんなニュアンスで伝わっているのかを思うと、身が縮む思いです・・・。

*3:従来の地域JaSSTもオンライン開催しているので、狭義のオンラインJaSSTと呼ぶべきか・・・